破綻主義について

破綻主義とは

破綻主義とは離婚の原因がどちらにあるのか(有責主義)に関係なく、そもそも夫婦生活を継続させていくことが可能なのか?夫婦の関係が破綻していないか?破綻しているのであれば離婚原因の責任がどちらにあろうとも、離婚を認めるべきではないか?という考え方です。
有責主義の頁でも記載していますが、最近までは、有責配偶者からの離婚請求は一切認めないという有責主義が採用されていました。
しかし、別居期間が長期間に渡り、夫婦関係が事実上破綻していると認められる場合には、一定の条件付きで有責配偶者からの離婚請求も認められるようになってきています。
ただし、前出の「不貞行為を行なった側」(有責配偶者)が離婚請求を行なうことが可能になるという事は、「愛人を作っておきながら妻や夫へ離婚請求を行なう」ということが可能となってしまいます。
従って、このような状況を防止するため、破綻主義では一定の条件を設けて判決を下す例がありました。
一定の条件について過去の判例を一部例に挙げますと

  • 倫理・道徳に反しない
  • 無責配偶者の保護を基本とする
  • 別居期間が5年以上である
  • 夫婦間に未成熟の子がいない

これらの条件が実際には盛り込まれています。
従って、例えば夫婦で同居中のに離婚請求を行なった場合や、未成熟な子がいる場合など、有責配偶者からの離婚請求を認められないということになります。

積極的破綻主義と消極的破綻主義

「消極的破綻主義」とは離婚したいと申し出た側に、浮気などの有責事項がある場合は、実質破綻状態でも離婚を認めないという立場です。「積極的破綻主義」はそれでも離婚を認めますよという立場です。具体的な例で行けば、他の男性や女性と交際をしている状態で、そうした交際をしている側が「実際問題夫婦じゃなくなっているから離婚したい」と言った場合に認めないか、認めるかという違いです。

苛酷条項とは

上でも記載したように、日本では伝統的に有責主義の立場が取られてきましたが、近年では破綻主義に変化し、昭和62年に出た判例から、積極的破綻主義へスタンスが変化してきています。ただし、積極的破綻主義では、片側の極端な身勝手・無責任が通ってしまう可能性が有りますので、それを防ぐために「苛酷条項」というものが定められています。この「苛酷条項」とは、離婚の結果配偶者や子供が著しい経済的困難や精神的苦痛を受けるような場合、離婚請求を却下するというもので、早い話、残された奥さんや旦那さん、子供のことを一方的に放って出て行くような離婚は認めませんよということです。とは言え、同居や健全な家庭環境を法律で強制できるわけでもありませんので、実質は配偶者・親として最低限の経済的な責任は果たしなさいという規定でもあります。現代社会の傾向から言って、この「積極的破綻主義」と「苛酷条項」の組み合わせが妥当といえるでしょう。

海外の状況

アメリカの家族法も近年様々な形で変化を余儀なくされています。
アメリカ従来の有責主義では、離婚原因を作る為に証拠となるものや行為を行なわせるよう配偶者が誘導したりするような、離婚をするための工作に手を尽くす風習も一部にはあったようです。それは日本よりはるかに有責配偶者からの離婚請求が困難だった時代背景からくるもので、近年徐々に変化しつつあります。
離婚を破綻主義でとらえる事で、論点を離婚後の子供の問題や経済的な問題に移行させ様々な問題の早期解決を図ったりと、増加する離婚件数に対する法的な対応が日々求められています。

この記事を書いた人

夫婦生活研究所 所長
1979年東京生まれ
20歳で初婚。28歳で一度離婚を経験し、その後35歳で再婚する。
初婚の際に一女を設けている。
男性、夫視点での結婚観を記事として執筆。
男性と女性とで、感覚の異なることから発生する摩擦を減らすことができるよう、日常生活に根付いた分かりやすい記事が人気。