浮気相手への慰謝料請求

浮気相手への慰謝料の請求について

夫婦の一方が、異性の愛人と不貞行為(浮気・不倫)をした場合、損害を被った配偶者は、貞操義務に違反した配偶者と異性の愛人に対して、貞操権侵害による精神的苦痛の慰謝料として、損害賠償を請求することは可能です。
不貞行為が異性の愛人の誘惑によるものか、自然の愛情によって生じたものかは関係なく、不貞行為自体に違法性があるとして慰謝料の請求を認めています。これら民法の規定を根拠に、共同で不法行為をした配偶者と異性の愛人に対し、精神的苦痛を受けた配偶者は、慰謝料として損害賠償の請求をすることができます。
ただし、夫婦関係が既に破綻している状態で、その後に配偶者が異性と性的関係を持った場合は、愛人との不貞行為と、夫婦関係の破綻には因果関係は認められないため、「不貞行為」を理由に慰謝料の請求はできなくなります。別居中に限らず、同居中であったとしても既に家庭内別居の状態であると客観的に判断されれば、破綻後の関係とされ、慰謝料の請求が認められない場合もあります。
また、不貞行為をした配偶者が、結婚をしていることを隠していて、愛人も過失がなく結婚をしていることを知ることができなかった場合や、配偶者が愛人に対して暴力や、脅迫によって関係を持った場合なども、愛人に対しての慰謝料の請求は、難しいのが現状です。
過去の判例からも責められるべきは貞操義務に違反した配偶者で、不貞行為の内容によっては、異性の愛人に責任は問えないという見解になる場合もあります。

慰謝料の請求に必要な7つの条件

  1. 不貞行為の相手が、既婚者であることを知っていた、または知りうることが出来たこと
    独身であるとの嘘に騙されて関係を持った場合で、知らなかったことについて過失がなかった場合には、不法行為責任は問えません。
  2. 複数回にわたる肉体関係(性的関係)があったこと
    キスや映画、プラトニックな関係の場合には、責任を追及することが出来ません。 また、1回だけだったという場合、責任は限定的なものとなり、裁判では、10万~50万程度の低い評価となることが多いようです。
  3. 不貞行為が、夫または妻の脅迫や暴力によるものではないこと
    不貞行為が、配偶者の何らかの脅しやレイプなどによる場合には、相手に責任を求められません。もっとも、不貞行為をした夫または妻に対しての慰謝料請求は、可能です。
  4. 夫婦関係が破綻していなかったこと
    不貞行為の開始時、すでに夫婦関係が破綻していた、という場合には、「不貞行為」とはいえません。
  5. 請求時、時効にかかっていないこと
    不法行為の消滅時効は、知ったときから3年、および行為の時から20年、です。
  6. 請求権を放棄していないこと
    調停や離婚協議書、その他において、夫(妻)から相当額を受領した場合、または請求権を放棄している(行為を許している)という場合には、請求出来ないケースがあります。
  7. 不倫(浮気)の証拠があること
    証拠の有無は請求出来るか出来ないかとは関係ありません。ただし、裁判になった場合には、相手方が事実を否認してしまえば、証拠がないと勝てません。

慰謝料の金額について

不貞行為の相手方(異性の愛人)に対する慰謝料の金額に算定基準はありませんので、具体的に相場がいくらと決まっているわけではありません。慰謝料の金額は、不貞行為による損害の程度や個々の事情が考慮され決められます。

慰謝料の算定に考慮されるのは

  • 被害を被った配偶者が受けた精神的苦痛の程度
  • 不貞行為の発覚によって夫婦の婚姻関係が破綻したかどうか
  • 年齢
  • 結婚年数
  • 不貞行為の期間・回数
  • どちらが不貞行為に積極的だったか
  • 異性の愛人の財力、社会的地位

などです。

これらを総合的に判断し、裁判官が金額を決定します。
離婚をしなくても不貞行為(浮気・不倫)の慰謝料の請求はできますが、実際は離婚をした方が慰謝料が高くなる傾向があるようです。過去の判例では50万円から400万円の間が多く、一般人の場合200万前後が最も多いようです。
これは、精神的損害の賠償としての慰謝料になりますので、請求金額自体はいくらでも構いませんが、あまりにも高額な慰謝料になりますと話がこじれてしまい、支払われないこともあるうえに、裁判ではこの請求金額の根拠を問われることになります。また愛人に支払い能力がなければ、例え裁判で支払命令が出たとしても、希望通りの支払いは望めない可能性が高くなります。

浮気・不貞行為の証拠について

不貞行為の証拠がなくても、愛人が不貞行為を認めて慰謝料を支払ってくれるのであれば必要ありません。
しかし、そのようなケースは稀で、実際は相手が不貞行為を認めず裁判で争うこととなることが多いですから、不貞行為の証拠はどうしても必要になります。裁判は証拠主義ですので、不貞行為の証拠が不十分な場合、被害者側の憶測や推測と捉えられ、慰謝料の請求を棄却される場合も生じてしまいます。
また、反対に愛人から名誉毀損で慰謝料を請求されてしまう可能性もあります。
自分で不貞行為の証拠を集め、慰謝料を求めるのは自由ですが、配偶者と愛人の「性行為(肉体関係)を確認または、推認できる証拠」をつかむのは、現実問題として困難です。そのような場合は専門家に相談・依頼した方が良いと思われます。専門家に相談すれば、裁判に必要な確かな「不貞の証拠」を集めてくれるでしょう。
また、訴訟の為には、愛人の現住所・連絡先なども判明させておく必要があります。

この記事を書いた人

夫婦生活研究所 所長
1979年東京生まれ
20歳で初婚。28歳で一度離婚を経験し、その後35歳で再婚する。
初婚の際に一女を設けている。
男性、夫視点での結婚観を記事として執筆。
男性と女性とで、感覚の異なることから発生する摩擦を減らすことができるよう、日常生活に根付いた分かりやすい記事が人気。